Someday Somewhere

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広東語の「黐線」

黐線[chi1 sin3]という広東語、あえてカタカナで表すとチーシンといった音になる。

香港にいた頃、年配の女性に広東語を教えてもらっていたのだが、こういった、人を罵る言葉とか俗語、所謂汚い言葉はほとんど教えてくれなかった。 まあ、香港のドラマや映画を見れば、この手の言葉は山のように出てくるので、しょっちゅう見ている人は教わらなくても知っていると思うのだが。

私の先生としては、発音も正確ではなく、言葉のニュアンスもきちんと把握していない外国人がこういう言葉をてきとーに使ってしまうと、誤解されたり、場合によっては大変なことになることを心配して、教えなかったのかもしれない。 私自身は、香港で生活していながらも、香港のテレビドラマや映画にはほとんど興味がなかったので、知らない言葉のほうが多かったと思う。

そんな言葉の中で、先生が「これは使わないほうがいい」といった言葉の中にあったのが黐線。 文字自体の意味としては、細い線がぐちゃぐちゃと絡まったような感じ。 そんな意味から「きちがい」とか「狂ってる」とかいった意味で使われる。

地元の人同士の喧嘩や冗談を含めた子供や若い人同士の会話の中で耳にしたことがある人もいるかもしれないが、先生曰く、「相手と言い合いになったとしても、黐線という言葉は使わないこと。 この言葉を言われたら、殴られてもおかしくないぐらい相手は怒るから」だそうで、この言葉を言われた人にとってはかなり頭にくる言葉らしい。

そんなものかと、冗談を言い合う友人にも私は使ったことがないのだが、ある時、知り合いが使ったことがあった。 深圳(シンセン)周辺にはゴルフ場がけっこうあるのだが、会社の人たちとゴルフに行った時のこと。 私たちの前をプレーしていた香港人の人たちがいた。 あまりゴルフをしたことがないのか、マナーがいまいちだったような。 そこで、うちの会社の一人が注意した。 なんだかんだと言っているうちに雰囲気があやしくなり、会社の人が相手に黐線と言ったとたん、相手の顔色が一変した。 その人はどちらかというと紳士的な雰囲気で、まあそれなりに経済的にも安定している感じの中年男性だったのだが、血相が変わったのには、傍にいた私も驚いた。 相手はこちらが広東語が母語ではない外国人だとわかっているので、ぐっと我慢してくれたようだが。 この時、私の広東語の先生が言っていた意味がよくわかった。

それ以来、この黐線という言葉、何でも言い合える人に対して使う人もいるようだが、私の中では、冗談だろうが何だろうが使ってはいけない言葉の一つになっている。