Someday Somewhere

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『侮るな東京の山 新編奥多摩山岳救助隊日誌』

丁度1年前ぐらいに山歩きで感じることをちょこっと書いたことがある(↓)。
www.tsukisai.net

今回、たまたまネット上で紹介されていた本があった。 奥多摩で山岳救助に長年携わってきた方の本。 奥多摩方面は行く機会が多いので、気になり読んでみた。



本の紹介文(Amazonより)

奥多摩のリアルがここにある。
山岳救助隊を20年にわたって率いた著者が鳴らし続ける警鐘。

20年間、警視庁青梅警察署山岳救助隊を率いてきた著者が、実際に取り扱った遭難の実態と検証を綴る。安易な気持ちで奥多摩に登る登山者に警鐘を鳴らす書。

著者が救助活動で携わってきた遭難を大別すると「滑落」「道迷い」が圧倒的に多いが、行方不明や疲労、軽装備によるものも後を絶たない。
著者は総じてそこに「侮り」があると指摘する。

著者が手がけた『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』(2015年、東京新聞出版局)『金副隊長の山岳救助隊日誌―山は本当に危険がいっぱい』(2007年、角川学芸出版)、『奥多摩登山考』(2002年、東京都公園協会)から顕著な事例を抽出し、新編としてまとめた一冊。
通常の山岳遭難のみならず、山中で発生した飲酒やドラッグ、強盗などの刑事事件についても解説。

大まかな目次

はじめに 東京都は立派な山岳地帯
滑落
道迷い
行方不明
疲労・軽装備
その他

高水三山、御前山、大仁田山、川苔山、百尋ノ滝、惣岳山、鋸山、大岳山、御岳山、天目山、天祖山、狩倉山、六ツ石山、雲取山などなど、普段から低山ハイクを楽しんでいる人だけでなく、天気もいいし連休だしちょっとハイキングでも行ってみるかという人たちもよく訪れる山々。

山歩きをしている人や山の遭難事故ニュースをチェックする人であれば、内容は大体見当がつく。 この本の遭難事故は1990年代後半や今から10年以上前のものだが、今だに山の遭難事故は減るどころか増え続け、相変わらず同じような原因のものばかり。

私は20年近くも山歩きをしているんだから・・・

本の内容は実際に読んでいただいたほうがいいのでここではこれ以上書かない。 そこで、1か月ほど前にあったことを一つ。

アテンドで行っている教室では時折、新しく加わる人たちがいる。 そんなAさんとBさん。 歩く速度が遅めで、常に列の後ろに下がってきてしまう。 早く歩けばいいというものではないが、十数名で歩いている列がすぐにちぎれてしまい、前を歩いている人たちが見えなくなってしまう。 ちぎれたことが分かると前方ではその二人が追いつくまで何度となく待つ。

この冬は暖冬及び山で食べるものが少なく熊の出没が毎日のようにニュースで報じられている。 何人もでわいわいがやがや歩いていればそれほど心配ではないが、ちぎれて2,3人で静かに歩いているとやっぱり心配になってくる。 また、分岐では、前の人たちが見えなくなって、危うく道を間違えるとこだったり。

これはあまりよろしくないと思い、下りでAさんが転んだのを気に先生に言って、AさんとBさんは先生のすぐ後ろを歩くよう伝えた。

この日は問題なく下山、そして帰宅。 ところが数日後、Aさんからクレームがあった。 先生の後ろを歩かされたことがよっぽど気にくわなかったらしい。 ここからAさんの怒涛のような文句が始まる。 「60歳を前に山登りでもしてみようかと思い山歩きを始めた。 私は20年ちかく山歩きをしているんだから・・・」から始まり文句が延々と続く。 教室のタイトルが悪い、昼ご飯の休憩は自分は40分以上は必要なのに短かった、歩く距離が長すぎる、行動時間が長すぎる(自分は3時間ぐらいだと思った)、トイレがない、参加している他の人たちが云々・・・。

後ろから歩き方を見ていたこちらからすると、
体力と脚の筋力不足
大した登りでもなかったにもかかわらず、下りの時点では脚の力が残っていなかった。

下りで転ぶ
脚の力不足に加え、ストックの長さの調節ができず、短いストックのまま下っていた。

休憩時間
寒い冬の山。 標高が高くなく、天気が良くても、お昼休みとは言え40分も50分もじっとしていたら体が冷え切ってしまう。

距離及び行動時間
事前に渡している資料や教室の内容を見ていない。 この教室で行う内容が自分には合っていないという考えにはならないらしい。

「自分は20年、30年山歩きをしているんだから」と言う人は結構いる。 経験豊富なことはいいことだろう。 ただ、同じ山を40歳の時に登るのと70歳で登るのと、どこが同じなのか。 台風や地震などの影響で山道が変わっていることもあるだろう。 天気だって前回と完全に同じとは限らない。 「自分は20年、30年山歩きをしているんだから」、「長く山歩きをしているが今まで大丈夫だった」=「今回も大丈夫」なんてことはありえない。 だから、どんなに経験を積んだ人だろうが、どんなに優れた登山ガイドさんだろうが、今までの自分の体験を得意げに話し、「だから、そんなに心配しなくても、今回も大丈夫ですよ」という言葉が私は嫌いだ。