今年読んだ山関係の本のうちの1冊。
著者は山岳遭難関係の書籍を数多く書かれている羽根田 治さん。
本の紹介文(Amazonより)
壮大な自然に親しむ登山やキャンプがブームになって久しい。 一方で、山への畏れが忘れられていないだろうか?
山には平地では遭遇しえない危険が潜んでいる。 クマに襲われたり、落雷が直撃したり、救助に来たヘリが目の前で墜落したり、他人の巻き添えで山頂付近から滑落したりと、ベテランですら生死の境目に立たされるのだ。
そんな時、どうすれば生きて帰れるのか? 遭難取材を長年続ける著者が貴重な証言からその術を解説。 数多の恐怖が待ち受けるのに「それでも登る」と皆が言う、山の魅力がわかる一冊。
大まかな目次
目次は大きく4つのカテゴリ(以下Ⅰ~Ⅳ)に分類されており、各カテゴリに多数の事例が紹介されている。 出版は2022年5月なので、比較的新しい事例も含まれている。 また、事故後、事故に遭った人に聞いた話や事故の検証、また事故を避ける方法などにも言及している。
Ⅰ自然が怖い
・国内最凶生物スズメバチからどう逃げるか
・臆病なクマが人間を襲う3つのパターン、etc.
Ⅱ無知が怖い
・厳冬の富士山2800m付近で遭難していた、目を疑うほどの軽装登山者
・登山前日に用具を買う危うい初心者たち、etc.
Ⅲ救助までが怖い
・初心者向け沢登り教室にて受講生が滝壺に滑落
・スキー中に逆さ宙吊り、頭の下は極寒の沢、etc.
Ⅳ人間が怖い
・滑落者のドロップキックで崖下にふっ飛ぶ
・山で盗難に遭えば命の危機に直結する、etc.
最近思ったこと
以前書いた記事と同じような内容になるかもしれないが、最近、山歩き教室のアテンドをしていて気になることがあった。
調子が悪いのに参加???
アテンドとして参加するクラスの参加者は中高年がほとんどで、大体60代~70代の人たち。 年齢だけで判断するのは難しいが、何回か開講していると、「膝の痛みがとれないので欠席します」とか「腰が痛いので休みます」などという理由で欠席する人が出始める。 若い人でもその人にとって無理なことをし過ぎれば足腰を痛めることはあるわけだが。
ところが、先日、歩道を歩いている段階で、後ろから見ても普通に歩けていない人が出席した。 どうも左の膝を痛めたらしく、左右の足を均等に動かして歩けていない。
本人いわく、「だいぶ治ってきたし、今日歩くルートはそれほどアップダウンもないので、歩けるかどうか試しに来てみた」とのこと。
はっ? 試しに来てみた? 講師と私以外の出席者は合計10名。 もし膝の痛みがひどくなり、あなたが動けなくなった時、他のメンバーのことを考えたことがありますか?
口に出してこそ言わなかったが、何、この人って感じ。 幸いにもその人は最後まで自力で歩いて下山できたが、こういう人の感覚が理解できない。
自分の膝の状態を見極めたいならば、何回も歩いたことがあり、コースも熟知しているような、自分が楽に歩けるコースを自分で歩けばいいわけで、わざわざ他の人に迷惑をかけるようなことをする必要はないわけだが。 こんな人でも、「若い頃は高い山ばかり行ってました~」みたいなことを言うわけで、ほんと呆れる。
挙句の果てに、その翌週、他の教室でも同じような人が1名出席。 この人はもともと体力・筋力共に少なく、今回は膝を痛めて2回ほど欠席したあと。 こちらも少し良くなってきたからと言って出席。 最初から最後まで足が痛そうで、他の人のペースについていけず、常に遅れがち。 他の人たちも見るに見かねて、講師のすぐ後ろを歩いてもらうが、それでも遅れがち。 見ていて痛々しいぐらいで、なんで今日出席?といった感じ。
こういう人たちに共通して言えることの一つに「自分は歩けている、こんな状態でも歩けた」と思ってしまうことがある。 そりゃ、歩けたことは歩けたけど、どんだけ周りに迷惑かけてるのか、そして事故の危険性を大いに含んでいるかについては全く気付いていない。
慣れてきた頃が危ない
アテンドで参加しているクラスに、もう少し上手に山歩きできるようになりましょうといったコンセプトのものがある。 参加者は山歩きの経験はあるが、所詮は初心者(本人たちは初心者とは思っていないようだが・・・)。
このクラスの中に以前からよく知っている人がいる。 この人、上記のクラスに参加するようになってから、自信が少しついたようで、他のクラスに出席した時も、周りの人に教えてあげたりしている。 傍から見ても自信がついてきたのが良くわかるようになった。
ある日、頂上からくだっている時、その人が勢い余ってか、登山道をかけおりる感じになり、前方の木につかまって止まった。 その先はもちろん斜面で、止まらずに前進していれば滑落。 本人もひやっとしたようだが、くだり方を少し教わり、自信もついてきて、思わずそうなったんだなというのがわかった。
自信がついてきた、経験豊富になってきたなどなど、中途半端が一番危ないと聞いたことがあるが、こういうことなんだなと思う一面だった。
今年も山岳遭難のニュースをよく目にする。 でも、TVやネットニュースなどで報道されるものは一部に過ぎない。 大事にはならなかった遭難や救助要請は日々あるんだろうなあと思う。
もちろん、ベテランやプロの人たちでも事故に遭う時は遭ってしまうのだが、それにしても、もう少し何とかならないものかと思ってしまう。 上記のように、最近目にした人たちを見ても、そりゃ、救助要請や山岳遭難が多発するわけだと思ってしまう。