先日、たまたま読んだ『僕はこうして日本語を覚えた』という本。 著者は流暢な日本語を話すことで有名はデーブ・スペクター氏。 1998年9月に出版された本である。 かなり昔。
デーブの語学学習10か条
この本の中に「デーブの語学学習10か条」というのがある。 まずはその10か条。
第一条:興味をエネルギーにする
第二条:母国語を大事にする
第三条:覚えた言葉はすぐ使う
第四条:自分のノートをつくる
第五条:とにかく繰り返す、読み返す
第六条:なるべく早く翻訳から卒業
第七条:自分のグルを探す
第八条:学習ツールをたえず携帯する
第九条:インターネットを活用する
第十条:ユーモアを理解したい
第九条の「インターネットを活用する」は、この本が出版された時代らしさが感じられるが、内容は語学学習の基本となるもので、今でも変わらないと思う。
第一条から第十条までの説明
本書からの引用なのでデーブ・スペクター氏の言葉のまま)
「興味が興味を呼んで、どんどん深入りし、気がついたら日本語の読み書きに不自由しなくなっていた。 これがベストなんだと思うし、その興味、つまりエネルギー源が強ければ強いほど、覚えるのは早い。」
第二条:母国語を大事にする
「母国語が貧相なら、学んだ外国語も貧相。」
「言葉を伝達手段として考えると、その人の知識、性格、その他もろもろのことが伝えられるわけ。 だから母国語もたえず磨いていないと、その人の底の浅さが見えてしまうというか、けっこう、厳しいことになってしまう。 母国語が豊かな人は、覚える外国語も達者になる。」
第三条:覚えた言葉はすぐ使う
「言葉って、使わないと、頭にインプットされたことにならない。 これ、僕の経験から学んだこと。 だから学んだことは、すぐ試してみる。」
「言葉って使わないと、自分の頭の中にあるだけ。 これじゃ、意味ないでしょう。 言葉のペーパードライバーになってしまってはダメ。」
第四条:自分のノートをつくる
「自分のノートをつくって、自分自身の教材をつくる。 スタイルはどうでもいいし、ノートも出来合いのものでもOK。 ただ、そこに自分の言葉で書くってことが大事なんだ。」
「言葉の意味も、辞書を調べて、そのまま書き写すだけじゃ、それこそ意味がない。 語学は受け身ばかりだと、絶対楽しくはならない。 新しい言葉は、自分が理解しやすいように説明する。 これが自分自身の教材になるわけ。」
第五条:とにかく繰り返す、読み返す
「学んだことは、その一方でどんどん忘れていく。 どうしようもないけど、これにどう対応するかは重要なポイント。 語学って、波打ち際で、砂の城をつくっているみたい。 ちょっと強い波がきたら、土台が壊される。 またつくる。 また壊される。 だけど、めげずに土台をしっかりつくっていくと、そのうち波がきても大丈夫になる。」
「だからとにかく繰り返す、読み返す。 これが、結局は一番効率のいい方法になる。」
第六条:なるべく早く翻訳から卒業
「これは訳を通さずに、学んでいる言葉で伝えられる生の情報に接するということ。 これは活字でも会話でも同じ。・・・その言葉が持つニュアンスとか使われる頻度とかを知ることが重要なんだ。」
「ニュースもなるべく早く本物を聴く。 はやくて置き去り状態になっても、かまわず聴く。 そのうちに慣れてくるから。 この繰り返しと慣れが、いつの間にか不安を解消してくれるわけ。」
第七条:自分のグルを探す
「語学の学習にも自分のグル、アイドルが必要。 それはひとりでもいいし、複数でもいい。 」
第八条:学習ツールをたえず携帯する
「語学を勉強しているときの禁句は「あとでやろう」。 そう思ったって、あとでやる人はまずいない。 だから自分の学習ツールをたえず携帯して、その場で覚えること。」
第九条:インターネットを活用する
「とにかくインターネットを味方にしなさい、そして活用しなさい。 これはいくらいってもいい足りないくらい。 それほどこれからの語学学習には必要なものだ。」
第十条:ユーモアを理解したい
「その国のユーモアを理解したとき、あなたはその国を理解したといえる。 そんなことわざが英語にはある。」
「好き」という動機
著者は、ご自分の経験を通して、とにかく「興味」、「好き」という動機が一番だと本書の中で何回も力説している。
その言葉を読むたびに、最近読んだ水木しげる氏の『水木サンの幸福論』に収められている「幸福の七か条」を思い出さずにはいられない。(思うがままに人生を送れるのか?:幸福の七か条 - Someday Somewhere)
やはり、何をするにも強い動機がある者に軍配があがるらしい(軍配があがる=世間でいう「成功」ではない)。
必要に迫られれば「強い動機を持つ必要がある」となり、無理矢理自分に動機を作らせる場合もあるが、理想は「本当にそれが好き」とか「それをやっていられれば何も要らない」ぐらいの「好き」という動機。
お二人とも言っていることは特別新しいことではなく、所謂「よく聞く言葉」なのだが、それでも、もっと若い時にこういう言葉をしっかり受け止めていれば良かったなという思いが頭の中をよぎる。
母国語の大切さ
第一条から第十条の中で「やっぱり」と思ったのが第二条の「母国語を大事にする」。
自分自身、留学したり、海外で働いたりする中でこれは痛感したこと。 自分もそうだし、周りにいる人たちもそうだった。
小さい子供は別として、大人になってから外国語を学ぶ場合、まずは母国語を使って学習することになる。 そこで、母国語自体がしっかりできていないと、結局は学ぶ外国語もその母国語のレベルを超えることは難しい。
今も昔も、世の中では英語、英語と英語学習は盛んなわけだけど、母国語も重要なのになーといつも思ってしまう。
なるべく早く翻訳から卒業
「できれば、このぐらいのレベルぐらいまでにはなりたい」と思う人も多いかも。
英語を学んでいた頃は、とにかく一日も早く「英語で聞いて、英語で考えて、英語で話す」ということができるように必死に勉強した覚えがある。
要するに、母国語は一切使わない、というか頭の中に存在しないといった感じだろうか。 この辺りまでくると、英語を使っていて「楽しくて楽しくてしょうがない」という気持ちになる。
最後に
本書は外国語学習法ともとれるタイトルだけど、最近よくある外国語学習方法を説明しているサイトとは違い、著者の生い立ち、長年の日本語との付き合い、そして生き方など、色々な面を含んでいる一冊だった。